COLUMN
住宅コラム
住宅の基礎知識
2023.07.01.Sat
地震大国、日本の家屋に求められる耐震対策の必要性とは
経済政策の一環として導入されたマイナス金利により、貯金するメリットはほとんどなくなりました。
その一方で住宅ローンを組みやすくなったことから、夢のマイホームを手に入れようとする動きが活発化しています。一般的な家庭において、一戸建てやマンションの購入は一生に一度あるかないかの大きな買い物となります。
30年前後で定年を見据えたローンを組み、月々だけでなくボーナス月にも大きな額の返済に耐えながらやっと手に入れられる貴重な宝物とも言えるでしょう。
できるだけ理想のイメージに近いデザインや間取りで長く快適に住み続けたいというのは当然のことで、経年劣化もリフォームで対応して家の寿命をできるだけ延ばそうとします。
しかし、そんな大切な家が一回の地震によって倒壊しまうこともあります。地震大国である日本においては、身近な現実として真剣に考えなくてはならないことです。
直近では、熊本地震で大きな被害がありました。また、津波被害も伴ったことで尊い人命とともに家屋の全壊も多かった東日本大震災、さらに、地震に対する恐怖とともに耐震対策の必要性について真剣に考えなくてはならないきっかけとなった阪神・淡路大震災など、日本の歴史は地震災害とともにあるといっても過言ではありません。
そして、決して遠くない将来に「南海トラフ巨大地震」が起こることも科学的なデータをもとに想定されています。
地球が地殻変動の活発期に入ったことは疑う余地もなく、世界規模で異常気象なども頻発しています。我が国では、地震の発生とともに建物に関する耐震基準が見直されていますが、直近の地震では震度7という大きな揺れに連続して見舞われるという状況もみられています。
かけがえのない家族の命や財産、そして我が家を守るためにでき得る対策は講じておくことが重要です。
日本の耐震基準
日本における耐震基準とは、建造物が地震の震動に耐えうる能力を証明するものであり、日本においては建築基準法及び建築基準法施行令などの法令によって定められているものです。
地震の歴史とともに見直されていて、初めて定められたのは関東大震災が発生した翌年の1924年のことです。木造家屋が大半を占めていた大正時代に定められた基準であり、平成7年に発生した阪神・淡路大震災では、甚大な被害が発生し、高速道路を含む多くの建物が倒壊、崩壊しました。被害を受けた全ての建造物が1924年に定められた基準によるものとは限らないものの、大きな地震の揺れに十分に対応できないことが判明したため、1981年に新しい基準が誕生しました。
実際に調査したところ、阪神・淡路大震災の時には、旧基準によって建築された建造物のうち、大破と小破を合わせると70%程度であったものが、新基準によって建築された建造物では、30%程度と激減していることが明らかになっています。
1981年に定められた基準では、震度5強程度の地震ではほとんど損傷しないこと、震度6強から7程度の地震で倒壊、崩壊しないことが求められています。
2000年以降は、建築基準法及び建築基準法施行令が改正され、従来の許容応力度等計算に加えて、限界耐力計算法が認められたことによって、それ以降の建築物にはさらに強度を増す必要性が求められるようになりました。
地震で建物が倒壊、崩壊すると、そこで暮らす尊い人命や財産が奪われるだけでなく、火災が発生することによって周囲に延焼が広がり、救急車両の経路を塞いで2次災害が拡大することにもなります。
地震に対する対策は、自分の家族だけでなく周囲の人々の生命や財産を守るためにも必要なことなのです。
地震に備えた設計と補強
地震が頻発する日本においては、免震のためのゴムや部材などを使って強い揺れに備えた耐震設計が盛んに行われています。強い揺れに弱いとされる壁の補強や工法なども常に研究されていて、メーカーによっては、実際に建物を建築したうえで、阪神・淡路大震災クラスの大きな振動を与える振動実験を行っているところもあります。
新築でマイホームを建てる際には、地震への対策がどのように行われているかを確認する必要があり、事前に納得のいく説明をしてくれるメーカーを選んだ方がいいでしょう。
また、すでにマイホームに居住している場合は、地震に対応するための補強の必要性について耐震診断を受けることがおすすめです。特に、1980年以前の建物は早目の対策が必要となります。
耐震診断は、震度5強程度の中規模地震でほとんど損傷することがないことを基準とする旧基準によるものと震度6強~7程度の大規模地震で倒壊、崩壊しないことを基準とする新基準によるものに分かれ、それぞれ、一次設計、二次設計と呼ばれています。
地震の揺れが部材に働く力や変形の状態の関係を研鑽して判断されるもので、実際の家屋が耐えうる力と必要とされる耐力を比較することで、補強の必要性や必要部分について明らかにしてくれます。古い木造住宅だけでなく、10年以上リフォームをしていないという住宅でも診断が必要となることもあります。
どんなに外観が美しくデザイン性に秀でていても、1回の地震で倒壊、崩壊してしまっては家としての意味がありません。極端に安価な建売住宅よりも耐震性にこだわった注文住宅の方が長い目でみると経済的です。
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